「2019年度 アフリカ進出日系企業実態調査」結果について
ジェトロは2019年9~10月、アフリカ24カ国に進出する日系企業に対し、現地での活動実態に関するアンケート調査を実施しました。その結果を以下のとおり発表します。
調査概要
実施方法 | アンケート調査 |
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実施時期 | 2019年(令和元年) 9月24日~10月25日 |
アンケート送付先 | アフリカ24カ国に進出する日系企業423社(有効回答は315社、有効回答率は74.5%)。 |
設問項目 |
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調査結果のポイント
- 黒字企業比率は5割と他地域より低いものの、将来を見込んで約6割が事業拡大を 検討。さらに、TICAD7開催を受けアフリカビジネス機運が高まる中、自社のグローバル戦略におけるアフリカの重要性はこれまで以上に増すとの見方が6割超。
- 経営上のリスクは依然残るが、第三国企業との連携など新たな手法でリスクを回避し事業拡大を模索。連携相手としては南ア、フランス、インドの企業を有望視。
- 進出理由では「市場の将来性」が8割、拡大する消費市場への期待感が鮮明に。今後の注目国ではスタートアップの台頭が著しいケニアが5年連続首位となった。
調査結果概要
第7回アフリカ開発会議(TICAD7)を2019年8月に終え、我が国企業のアフリカ進出に対する機運が高まると予想された。ジェトロが同年9~10月にアフリカの日系企業423社にアンケート調査を行ったところ、6割以上の企業がグローバル戦略におけるアフリカの重要性が増すと回答した。現地への進出理由については、「市場の将来性」を挙げる企業が8割に上った。また、デジタル経済への移行など新たな分野への関心がみられたほか、有望国では近年スタートアップの台頭が著しいケニアが5年連続首位となった。
1.黒字企業比率は5割に留まるも、約6割が事業拡大検討。グローバル戦略上の重要性も高まる。
- 2019年の営業見通しが「黒字」と回答した企業は前年より微増、アフリカ全体で半数を超えた(49.8%→50.3%)。国別では南アフリカ共和国(以下、南ア)が約7割と好調。2019年5月の総選挙で発足したラマポーザ新政権による汚職撲滅や財政健全化への期待、政情の安定化によるビジネス拡大が背景にある。ナイジェリアでも前年を上回る半数超が黒字を記録した(47.6%→50.0%)。2019年2月の大統領選挙では大きな混乱もみられず現職ブハリ大統領が再選し、ビジネスへの影響は限定的だった。一方、コートジボワールでは黒字と回答した企業は2割にとどまった。2020年10月予定の大統領選挙に伴う政情不安が懸念と指摘する企業もある。【資料7-8頁】
- 「今後1~2年に事業を拡大する」と回答した企業の割合は、過去6年連続で過半を記録し、事業拡大傾向は継続。国別では、コートジボワールで8割に上った。大統領選を控え政情不安が懸念される一方で、周辺諸国への事業拡大を目指すとの声が複数聞かれた。天然ガス開発で急成長が見込まれるモザンビークで7割弱、フリーゾーン開発で企業誘致に力を入れるモロッコで6割となった。ケニア(59.5%)、エジプト(58.6%)、ナイジェリア(54.5%)でも次世代ビジネスの開発といった新規事業拡大への意欲がみられた。【資料13頁】
- 2019年8月の第7回アフリカ開発会議(TICAD7)の開催を受け、企業のグローバル戦略におけるアフリカの位置づけの変化を聞いたところ、5年前よりも今後5年のほうが重要性は増すと回答した企業が多かった。これまで以上にアフリカをビジネスパートナーとして重視する傾向を示唆する結果となった。なお、3年ごとに開催されるTICADは、次回はアフリカを舞台に2022年に予定されている。自社の経営トップが現地を訪問することで、アフリカ戦略がより重要性を帯びるとの声も聞かれた。【資料17頁】
ジェトロ作成、(注)回答企業数が10未満の国は除く
ジェトロ作成
2.「規制・法令の整備、運用面」が最大リスク。第三国企業との連携でリスク回避、事業拡大狙う。
- アフリカビジネスの機運が高まる一方で、依然としてリスクに対する懸念がみられる。経営上の問題点では、「規制・法令の整備、運用面」が最大リスクで8割近い企業が問題視。ガバナンスへの強い懸念が示された。他方で、比率をみると前年の87.3%から77.8%まで低下した。この背景には南ア(83.2%→66.7%)で新政権への移行後に汚職・賄賂の要求が減ったことや、モロッコ(79.2%→64.7%)でインターネット上での納税システムの簡素化が図られたことがある。【資料20-21頁】
- 市場における競合相手では、前年から変化がみられた。最大は欧州系企業で、前年にトップに浮上した中国企業を上回った。中国との競合では価格面を挙げる企業が圧倒的に多いのに対して、欧州系企業との競合内容では、充実した現地ネットワークの存在、ファイナンスを含めた自国政府からの支援、貿易協定による税優遇措置などが指摘された。【資料22頁】
- 一方で、第三国企業との連携による事業拡大への期待もみられる。第三国連携のメリットとして、約7割が「パートナー企業のネットワーク活用」と回答した。連携相手では南ア、フランス、インド、中国が有望視された。南アは域内拠点として、広域展開で先行する地場企業が蓄積したノウハウと市場ネットワークが魅力。フランスは仏語圏アフリカ諸国での協業可能性への期待。インドは同国と親和性のあるアフリカ市場での優れた戦略のほか、(日本企業の)インド拠点を活用したアフリカ進出が示唆された。中国については、商品や資材のサプライヤーとしての連携可能性が示された。【資料24頁】
ジェトロ作成
3.進出理由では「市場の将来性」が8割、消費市場への期待鮮明に。有望国ではケニアが5年連続首位。
- 民需も狙っているとみられる「市場の将来性」を進出理由とする企業は81.7%。同じ設問を盛り込んだ過去の調査結果の中では最多となった(2018年度77.3%、2017年度76.4%、2007年度71.0%)【資料29頁】。投資環境面のメリットとしても「市場規模/成長性」は7割超に上り、国別ではナイジェリア、コートジボワール、エジプトでは約9割が魅力と回答。【資料19頁】
- 今後有望視する分野では、消費市場が前年から大きく増加してトップとなった(40.9%→53.6%)。続いてインフラ、サービス業、デジタル産業が並び、これまでの注目分野であった資源、輸送機器(二輪・四輪等)などを上回る結果となった。【資料30頁】
- FTAの利用では、2019年5月に発効した「アフリカ大陸自由貿易圏(AfCFTA)設立協定」への期待が高く、今後の利用を検討しているFTAの中でトップに浮上した(4割超の企業が利用を検討)。なお、AfCFTA設立協定はアフリカ大陸全域にわたる自由貿易圏の形成を目的に2019年5月に発効したが、発効したのは枠組み協定でありこれをもって即時関税撤廃となるわけではない。タリフライン(TL)90%の自由化は約束されているが、各国が作成する譲許表の提示、交渉、承認プロセスは発効と同時に開始されたばかり。このプロセスを経て2020年7月の運用開始が目標とされているが、交渉の長期化を懸念する声も聞かれる。【資料27-28頁】
- 現在利用しているFTAについては、南アがけん引する南部アフリカ開発共同体(SADC)、続いて域内FTAの中でも制度運用が比較的進む東アフリカ共同体・関税同盟(EAC)、東南部アフリカ共同市場(COMESA)の順となった。【資料27頁】
- 今後の注目国では5年連続でケニアが首位。2位のナイジェリア、3位の南アも5年連続で同じ順番となった。ケニアは経済規模では域内7位に留まるものの、モバイルマネーの高い利用率(2018年人口比66%、ケニア通信局)にみられる強固な決済システム基盤がスタートアップの台頭を加速させている。2018年のスタートアップ資金調達額では国別トップを記録した。ナイジェリアは大陸最大の経済・人口規模、南アは域内で群を抜く経済インフラに高い評価を維持。4位のエチオピアは域内最低水準の賃金と工業団地の整備による製造業発展の期待や、2019年10月にノーベル平和賞を受賞したアビィ・アハメド首相(2018年4月就任)による改革への期待の声が聞かれた。【資料31-33頁】
ジェトロ作成
順位 | 国名 | 割合 |
---|---|---|
1位 | ケニア | 32.9% |
2位 | ナイジェリア | 30.3% |
3位 | 南アフリカ共和国 | 28.3% |
4位 | エチオピア | 24.0% |
5位 | モザンビーク | 20.4% |
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January 16, 2020 at 02:09PM
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