ニュース解説
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、国内の医薬品市場にも大きなインパクトを与えそうです。COVID-19の感染拡大は2020年度の国内医療用医薬品市場に最大で3030億円のマイナス影響を及ぼす、との予測をIQVIAがまとめました。
最大で年間マイナス3030億円の影響
IQVIAがまとめた最新の市場予測によると、2020年度(20年4月~21年3月)の国内医療用医薬品市場は10兆5300億円~10兆7300億円となる見込み。COVID-19の影響を除外した場合(10兆8090億円~11兆90億円)と比べると、2530~3030億円のマイナスとなる見込みだと言います。COVID-19がなければマイナス0.8%~プラス0.2%と予測されていた20年度の市場成長率も、感染拡大の影響でマイナス3.1%~マイナス2.1%に落ち込む見通しです。
今回の市場予測は、▽IQVIAが持つ過去のデータ(売り上げデータや処方データなど)▽過去の事例分析(季節性要因による患者数の変化や東日本大震災後の通院患者の推計)▽COVID-19に関する海外(欧州、中国、韓国、オーストラリアなど)の動向▽政府の公式発表(感染者数など)――などをもとに算出。今年4月の薬価改定の影響はマイナス4.2%としています。
同社はCOVID-19による医薬品市場への影響について「その範囲や期間は、今後の感染者の増加、ピーク時期、収束時期による」と指摘。今回の予測では、「新規感染者が28日間報告されなかった場合」を収束と定義し、感染のピークは今年4~6月、収束は今年10~12月か遅くとも来年1~3月に収束することを前提として推計を行いました。
20年度の市場を四半期ごとに見てみると、COVID-19の影響は感染がピークを迎える4~6月期にマイナス4.6%と最も大きくなる見込み。7~9月期もマイナス3.6%の影響がありますが、10~12月期はマイナス1.3%、21年1~3月期はマイナス0.8%と徐々に回復し、21年1~3月期にはCOVID-19の影響を除いた水準に戻るとIQVIAはみています。
慢性疾患では処方日数が長期化
COVID-19の影響は主に、受診行動の変化や医療機関のアクセス制限による患者数の減少が要因。IQVIAは「患者数の減少は疾患領域や重症度によって異なる」としており、COVID-19による患者の減少が想定されにくい領域として「がん」「自己免疫疾患」「感染症」「呼吸器」「神経」を挙げています。
一方、「生命に関わるような重大な疾患領域以外では特に、患者は診察や処方のための通院を控えるだろう」と指摘。実際、慢性疾患や生活習慣関連の疾患(中枢神経系疾患、高血圧症、糖尿病など)では、今年2月後半~3月前半の処方日数が過去の平均を上回ったといいます。IQVIAは「処方日数の長期化は2020年を通して続くとみられ、COVID-19の影響が収束したあとも新たな基準として定着するかは興味深いところだ」としています。
(前田雄樹)
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