米国の株式市場は3月12日、史上最も急激な下落に見舞われた。ダウ平均株価は史上2番目の下落幅を記録した。比較的新しい指標で、ボラティリティ(変動)の程度を示すVIX指数は、過去最高値に達した。
だが、そうした厳しい傾向にもかかわらず、市場の混乱の表面下には、明確な傾向を持つ勝者と敗者が存在していた。現在、学術界の研究者たちは、データをふるいにかけ、今回の危機が、株式市場やさらに広範な市場に与えた影響の詳細を解き明かそうとしている。
セクターの傾向
最大の敗者は石油だ。石油業界では、価格競争が進行していたなかで起きたパンデミックにより、需要が壊滅した。また、不動産、観光、エンターテインメントといったセクターも大きな痛手を受けた。
一方、比較的好調なセクターでは、市場全体が急降下したにもかかわらず、変わることのない利益が得られていた。そうしたセクターとしては、天然ガス、食品、医療、ソフトウェアが挙げられる。不振の銘柄はボラティリティもきわめて高かったのに対し、好調な銘柄は価格が比較的安定していた。
銘柄の特徴
全米経済研究所(NBER)の論文のなかで、研究者のウェンジ・ディン(Wenzhi Din)らは、比較的よく理解されているであろう「セクターの傾向」からさらに踏み込み、この期間に比較的好調だった企業の特徴について検証した。予想できることだが、好調だった企業は、バランスシートが健全で、保有する現金が多く、負債が少なかった。また、サプライチェーンがパンデミックの影響をただちに受けにくい企業も好調だった。例えばサプライチェーンを中国に持つ企業は、パンデミック初期に比較的大きな打撃を受けた。
だが、チューリッヒ大学の研究者らが指摘しているように、危機が進むにつれて、さまざまな変数の重要性が徐々に変化していった。当初は、バランスシートが比較的弱く、現金が少なくて負債が多い企業は不振だった。しかし、連邦準備制度理事会(FRB)が3月23日、プライマリーマーケット企業債権ファシリティ(PMCCF)と、セカンダリーマーケット企業債権ファシリティ(SMCCF)という形で流動性を供給すると発表した以後は、傾向が変化した。FRBの支援が明確になったことで、バランスシートの弱い企業が上向き始めたのだ。数日後には、議会がコロナウイルス支援・救済・経済保障(CARES)法を可決し、さらなる支援が決まった。
おそらく最も意外なのは、同じ期間中に好調だったのが、ESG(環境、社会、企業統治)スコアが高いほか、買収防衛策を設けないなど、ガバナンス・プロセスが比較的優れている企業だったことだろう。ボストンカレッジの研究者ルイ・アルバカーキ(Rui Albuquerque)らも同様の結論に達し、コロナ危機下では、環境や社会といった面で優れた特徴をもつ企業の株価が好調だったことを明らかにした。
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September 18, 2020 at 06:30AM
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