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COVID-19の影響で回復が遅れる半導体市場(Impress Watch) - Yahoo!ニュース

■2020年の半導体市場予測は下方修正が続く  新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的な大流行によって、半導体市場の回復が遅れている。2019年の世界半導体市場は半導体メモリの市況悪化によってマイナス12%(金額ベース、成長率)と、2009年以来の大きなマイナスとなった。その反動と半導体メモリ市況の回復から、2020年の半導体市場はかなりの成長が見込まれていた。2019年(昨年)12月の時点では、業界団体や市場調査会社などの予測値はプラス5.9%~プラス12.5%の成長となっていた。 【この記事に関する別の画像を見る】  しかし新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行が2020年2月にはじまったために電子機器を含めた大幅な景気後退が発生し、半導体市場の回復は遅れを余儀なくされている。半導体の市場予測は相次いで下方修正された。2020年3月~6月に発表された修正済みの予測値は、マイナス6%~プラス3.3%と低下した。  COVID-19の世界的な流行は、2020年の夏になっても収束する気配を見せていない。半導体市場予測のいくつかは再度、下方修正された。一方、当初の予測ほどには半導体の生産と販売は悪化していないとして、予測を上方修正する市場調査会社もある。現時点では市場調査会社による修正予測はマイナス4%~プラス3.3%となっている。 ■メモリはプラス、非メモリはマイナスの2020年  2020年の半導体市場を製品分野別に見ると、全体としてはメモリがプラス、非メモリがマイナスという傾向にある。メモリの主力であるDRAMとNANDフラッシュメモリでは、NANDフラッシュメモリの回復と成長が目立つ。  メモリの成長率予測は市場調査会社Gartnerが13.9%(2020年4月時点)、業界団体WSTSが15%(2020年6月時点)とかなり高い。市場調査会社IC InsightsはNANDフラッシュメモリの成長率を27%、DRAMの成長率を3%と予測している(いずれも2020年8月時点)。  これが非メモリ市場になると、かなり厳しい。Gartnerによる予測がマイナス6.1%(2020年4月時点)、市場調査会社Omdiaによる予測がマイナス5%(2020年4月時点)である。WSTSによる予測(2020年6月時点)は個別半導体がマイナス6.6%、アナログがマイナス5.8%、IC Insightsによる予測(2020年8月時点)は32bitマイコンがマイナス4%、16bitマイコンがマイナス14%、4/8bitマイコンがマイナス15%となっている。  メモリの需要はCOVID-19によって減るどころか、かえって増える傾向が見て取れる。自宅やサテライトオフィスなどで業務を遂行したり、自宅で学校の授業を受けたりする事例が増加したため、パソコン向けメモリとストレージ(おもにSSD)、クラウド向けメモリとストレージの需要が増加した。 ■メモリ市場に対するCOVID-19の悪影響は軽微  メモリ市場に対するCOVID-19に影響はどのようなものだったか。市場調査会社のYole Developpementは2020年6月29日に四半期ごとの影響を発表した。  同社の調査によると、パソコン用メモリ市場の2020年第1四半期(1月~3月期)は当初予測(COVID-19の流行前に作成した予測)の63億ドルよりも低下して現在の推定値は53億ドルになったものの、続く同年第2四半期(4月~6月期)は逆に当初予測の52億ドルから上昇して62億ドルになった。  サーバー用メモリ市場は2020年第1四半期と第2四半期とも、COVID-19発生後の市場規模が当初予測を上回った。ただし2020年第3四半期の予測では両者はほぼ同じ規模となり、同年第4四半期では現在の予測値が当初予測よりも低くなる。  またDRAMとNANDフラッシュメモリのビット換算出荷量は、2020年の上半期に限ると当初予測よりも増加した。ただし、2020年の下半期は当初予測よりも出荷量は減速する。ビット換算出荷量の伸び率はDRAMが当初予測の17%から15%に、NANDフラッシュメモリが当初予測の30%から29%に低下すると予測する。 ■上半期の半導体売上高ランキング上位は前年と変わらず  COVID-19の世界的な流行は、半導体ベンダーの売上高ランキングにどのような影響を与えたのだろうか。結論から先に言ってしまうと、今のところ、ランキングへの影響はほとんどない。市場調査会社が発表した売上高ランキングの上位は、前年(2019年上半期)と変わっていない。  たとえばIC Insightsが2020年8月11日に公表した、2020年上半期(1月~6月)における売上高ランキング上位10社のなかで、トップから7位までの半導体ベンダーは前年と同じだった。トップがIntel、2位がSamsung Electronics、3位がTSMC(注:シリコンファウンドリをIC Insightsはランキングに含めている)、4位(ベンダーでは3位)がSK Hynix、5位(ベンダーでは4位、以下同じ)がMicron Technology、6位がBroadcom、7位がQualcommである。  特筆すべきは、Broadcomを除くとこれらの企業すべてが、前年(2019年)の上半期に比べて売上高を伸ばしていることだ。大手の半導体ベンダーにとって、COVID-19が悪い影響を及ぼしているとは言えない。 ■HiSiliconが中国ベンダーとして初の上位10社入り  上位10社のランキングは、2020年第1四半期についても市場調査会社のOmdiaとIC Insightsがそれぞれ発表済みだ。  Omdiaは2020年6月23日に、2020年第1四半期の半導体ベンダー売り上げ上位10社を発表した。1位から6位までは、IC Insightsが2020年8月に公表した2020年上半期(1月~6月)のランキング(TSMCを除く)とまったく変わらない。  IC Insightsは2020年5月6日に、2020年第1四半期の半導体ベンダー売り上げ上位10社を発表した。このランキングでも、トップから7位までの顔ぶれは同年上半期と同じであり、さらには前年(2019年)の第1四半期とも変わらない。上位6社あるいは7社(TSMCを含む場合)の顔ぶれはほぼ固定されている、と言える。  2020年第1四半期の売上高ランキングで特筆すべきは、HiSilicon Technologies(以降はHiSiliconと表記)がはじめてトップ10社入りしたことだ。Omdiaのランキングでは8位、IC Insightsのランキングでは10位につけた。中国の半導体ベンダーがランキング上位10社に登場するのはこれがたぶん、史上はじめてのことだ。  HiSiliconは中国の大手通信機器メーカーHuawei Technologiesの子会社であり、半導体設計を専門とするファブレスの半導体ベンダーである。近年、成長が著しい。Omdiaのランキングによると2019年第4四半期のHiSiliconの売上高は20億1,200万ドルでランキングは16位。それが次の2020年第1四半期には売上高が28億2,200万ドルと40%も増え、ランキングでは8位にステップアップした。IC Insightsのランキングによると、2019年第1四半期には売上高が17億3,500万ドル、ランキングは15位であったのが、1年後の2020年第1四半期には売上高が26億7,000万ドルと54%増加し、ランキングは10位につけた。  そして2020年上半期の売上高ランキングでも、HiSiliconはトップ10入りを果たした。IC Insightsが2020年8月11日に発表したランキング(前述)によると、HiSiconは前年(2019年)上半期の16位から、今年は10位にランクアップした。売上高は52億2,000万ドルで、前年の上半期から49%増加した。この増加率はトップ10社の中ではもっとも高い。 ■HiSilicon急成長の恩恵を受けたTSMC  HiSiliconの急成長による恩恵を最大に受けたのは台湾のファウンドリ大手TSMCだろう。IC Insightsが2020年5月6日に公表したリリースによると、TSMCの売上高に占めるHiSiliconの割合が急増している。2017年には5%、15億3,000万ドルだったのが2年後の2019年には14%、49億5,000万米ドルと金額は3倍を超えた。現在ではHiSiliconはTSMCにとってAppleやBroadcom、MediaTek、Qualcommとならぶ重要顧客となっている。  ただし、HiSiliconが売上高ランキングで上位10社を今後も維持するかどうかはわからない。米国商務省産業安全保障局(BIS)による輸出管理強化により、中国以外の企業が米国製半導体製造装置(厳密には米国の技術とソフトウェア)によって生産した半導体チップは2020年9月15日以降、HuaweiおよびHiSiliconに出荷できなくなるからだ。TSMCの最先端チップは米国の半導体製造装置を使って製造している。このため、2020年第4四半期にHiSiliconとTSMCの半導体売上高は減少する可能性がきわめて高い。  これらの要因と予測から、2020年下半期の半導体市場は成長が減速する可能性が少なくない。市況の本格的な回復は、2021年以降ということになりそうだ。

PC Watch,福田 昭

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